上顎前歯部少数歯欠損症例

上顎前歯部少数歯欠損インプラント症例解説

上顎前歯部少数歯欠損におけるインプラント治療の注意点や特徴をDr.新谷悟が解説します。

診断時において
  • 審美領域である前歯部などにおいては特にその深度、角度などを考慮し、経年的にインプラント体の一部などが露出するなどのことがないように十分注意して設計する
  • 唇側の骨が吸収されている症例が多いため、いかに唇側の骨の厚みを確保するかを最優先に考える
  • 歯の部分をどのような形態に仕上げるのかを十分に考慮して、埋入位置、角度、深さを検討する
  • 唇側の骨の厚みが十分に確保できない場合に、骨造成をするのかエクスパンジョンを行って、骨を広げるのかを十分に検討する
手術時において
  • 骨造成、エクスパンジョンなどにおいて唇側の骨の厚みが十分かどうかの計画に従い、角度など既存骨に誘導されないようにガイドを十分に安定させてドリリングを行う
  • 骨とインプラントがインテグレーション(結合)するまでの間に、インプラント体に負担がかからない様にヒーリングアバットメントの長さや仮歯、義歯の選択などに留意する
  • 前歯部の歯肉の厚みも個人差があるために、その厚みも十分に考慮して、非切開、切開などの選択を行う

こういった点を留意したい。

目次
上顎前歯部少数歯欠損インプラント症例
症例ケース01 (2017.11.29 - Data up)
右側上顎中切歯の欠損症例(他院で骨造成が必要と診断され、当院の2倍以上の費用がかかると言われた)
(40歳代 男性)
STEP.01

かかりつけの歯科医院で右側上顎中切歯の保存不可能(詳細不明)で抜歯された。
インプラント治療には、ほかの歯科医院を紹介すると言われ、紹介された歯科医院では骨造成を行い、半年後にインプラントの埋入を行うとされた。
非常に高額であったのと、骨造成が本当に必要かどうか?インプラントの治療について不安を覚えたため当院を受診した。
インプラント埋入に際して若干の人工骨補填は行うものの、大規模な骨造成は必要なく、患者さんは、術後約4か月でインプラント補綴により、見栄えもよくなり、なんでもよく噛めると喜んでいただけました。

STEP.02

LANDmarker(iCAT)の画像。ワックスアップを取り込み埋入位置を検討した。

STEP.03

埋入部位のCT画像。骨の厚みがしっかりあり、理想的な位置に埋入できることが分かる。

STEP.04

Landmark Guide 的心ガイド(iCAT)

STEP.05

Landmark Guide 的心ガイド(iCAT)を適合させ、サーキュレーションメスで歯肉の切開、切除後、的心パイロットドリルでインプラント埋入窩を形成している。FINESIA HA Tapered type 直径3.4mm/長さ12mm(京セラ)を埋入する計画を立てた。

Landmark Guide 的心ガイドにより位置、方向が制御され、ストッパーまでしっかりと形成することで適切な深度でのインプラント埋入窩が形成される。

STEP.06

既存骨とのギャップはほとんどないが、念のために、自家骨とコラーゲン・HA複合体のスポンジ状の人工骨 リフィット(京セラ)をギャップに補填することにした。自家骨とリフィット、リフィットを細かくして自家骨と混ぜ、ギャップに填入した。自家骨はドリリングの際に採取される。

STEP.07

印象採得時ならびに最終補綴物装着時確認Dental X-P。予定された部位に埋入されている。

手術内容:右側第 中切歯(#11)インプラント埋入術
埋入インプラント:FINESIA Bone Level HA 直径3.4mm/長さ12mm
トルク:10N/cm (#11)
麻酔:笑気鎮静・モニター下
局所麻酔:2%キシロカイン(1/80,000Epi) 3.6ml
手術時間:8分
STEP.08

担当歯科技工士の中田デンタルのコメント

どのシェードガイドにも当てはまらない色調で隣在歯の象牙質の彩度と明度の発色が強く、規制のポーセレンパウダーでは再現困難であったためオペーシャス、デンチン共にA2をベースにオレンジと赤を配合して築盛を行った。特に歯頸部のポーセレン層がかなり厚みがある形態が予測されたため、明度低下を起こさない様しっかりとオペーシャスデンチンで裏打ちをしできるだけ反対側と合うように再現した。形態も幅が広くまた切端のガイドもあり非常に難しかったが。前歯部全体感で見ても違和感のない形にデザイン出来たと思う。

STEP.09

最終補綴物装着時の口腔内所見

STEP.10

最終補綴物装着時の口腔内所見

抜歯後の唇側の骨吸収で若干の歯肉の陥凹はあるが結合組織移植の話をさせていただくもそこまではしたくないとのことであった。技工の色合わせなど大変であったでしょうと逆に非常に感謝されました。色合いもよくなんでもよく噛めるようになったと喜んでおられます。

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