骨を作るインプラント

骨不足でインプラント治療ができないと言われた方

骨が足りないから、インプラント治療ができないといわれた方に、「インプラント治療ができない」のではなく、その術者は、骨を作りインプラント治療する知識と技術を持っていないということです。

インプラント治療を適切に行うには、インプラント体を埋入するための顎の骨が必要になります。その骨大きさは少なくとも骨の幅で約6mm、高さで少なくとも10mm程が必要になりますが、骨の量が十分でなく、インプラント治療ができないと言われる患者さんも多くおられます。

患者さんの骨が少ないのは事実と思いますが、「患者さんの骨の量がなくてインプラント治療が行えない」というのは「行えない」にではなく、その術者に骨を作る技量がないことなのです。

ですから「骨の量が少ないので、インプラント治療ができない」ということなく、高度な知識と技術を持った術者が行えば、極端に言えばどんな方でもインプラント治療は行えるのです。

インプラント治療に対して、骨がない場合には、骨を誘導したり、骨移植を行ったり、サイナスリフトやソケットリフトなどで上顎洞といわれる空洞に骨を作るなど、「既存骨の上や周囲に新しい骨を増やしたり、作ったりすること」によって、インプラント体を骨の中に埋入することが出来るようになります。

GBR法(骨再生誘導法)

GBR(Guided bone regeneration)とは、骨が失われた部位に人工骨(ハイドロキシアパタイトやB-TCPなどのリン酸カルシウム系の材料)や自家骨(自分の骨)を移植したり、メンブレンやチタンメッシュ等を用い骨増生のためのスペースを確保し、骨の再生を図る治療のことです。

インプラントを埋め込むのに十分な骨の厚み、幅がない場合、用いられるテクニックで、インプラントを埋入する手術の前に必要な骨を作ってしまう場合と、手術の時に同時に行われることがあります。

抜歯してすぐに行うインプラント(抜歯即時埋入法)でも、この治療法を応用することがあります。

ベニアグラフト(ブロック骨移植)

上顎の前歯部は唇側の骨の厚みが薄く、抜歯すると吸収されてしまうことがあります。骨が吸収されると骨に付いていた歯肉も退縮するため、審美的な問題が生じてしまいます。

上顎前歯部のインプラント治療において、手術後もしっかりとした骨と歯肉を維持するために行う骨造成法がベニアグラフトです。

主に自家骨(下顎枝や上顎結節)から板状のブロック骨を採取して、前歯部の顎骨に貼り付けピンなどで固定します。さらに、形態を整えたり隙間を埋めるために人工代用骨を併用してバリアメンブレンという膜で覆い固定していきます。

他の骨造成法と同様に手術後約6ヵ月で移植骨が安定し、インプラント治療が可能となるが、ベニアグラフトと同時にインプラントを埋入することもあります。

メリット

骨レベルが揃った状態でインプラント治療が可能となるため、治療後の審美性(歯肉や歯の自然な連続性)が高く、ブラッシングなどのメインテナンスも容易になります。

デメリット 自家骨を使用する場合は自家骨採取による手術侵襲が大きく、代用骨やチタン製のプレートを使用する場合はより高い治療技術が求められ、治療費も高くなります。いずれの方法も移植骨が安定しないことや感染によって再治療となるリスクがあります。
オンレーグラフト(垂直的骨造成術)

臼歯部(奥歯)が欠損している状態で、インプラントを埋入するための骨の高さが足りず、隣の歯と骨レベルが大きく異なる場合に用いる骨造成法です。

上顎では親知らずの奥の上顎結節部から、下顎では奥歯の下の下顎枝部から骨(自家骨)をブロックで採取し、形を整えて骨量が不足した部位に貼り付ける。人工代用骨を使用してこの治療を行う場合もあるが、材料が顆粒状であるためチタンメッシュなどを用いてしっかり固定する必要があります。

手術後約6ヵ月で移植骨が安定し、インプラント治療が可能となります。

メリット

骨レベルが揃った状態でインプラント治療が可能となるため、治療後の審美性(歯肉や歯の自然な連続性)が高く、ブラッシングなどのメインテナンスも容易になります。

デメリット 自家骨を使用する場合は自家骨採取による手術侵襲が大きく、代用骨やチタン製のプレートを使用する場合はより高い治療技術が求められ、治療費も高くなります。いずれの方法も移植骨が安定しないことや感染によって再治療となるリスクがあります。
サイナスリフト

上顎臼歯部(奥歯)の上部には上顎洞と呼ばれる空気がありますが、人によってはこの空洞が大きく、また、歯がなくなると歯槽骨も吸収しますので、上顎においては歯槽骨側と上顎洞側から骨吸収が進行することも少なくないのです。そのため、上顎の臼歯部にインプラント体を埋入する時に、必要な量の骨が確保できない事があります。

この場合にインプラント体を埋入する骨を確保するために、サイナスリフトという方法があります。上顎洞粘膜(シュナイダー膜)を上顎洞から剥離して挙上し、その挙上によってできたスペースに人工骨や他部位から採取した自家骨を移植する事により上顎洞底に骨を作り、インプラント埋入手術に必要な骨の厚みを獲得する方法です。

手術後約6ヵ月で移植骨が安定し、インプラント治療が可能となりますが、サイマルテニアス・アプローチ(同時法)という術式では、次の写真のように、サイナスリフトと同時にインプラント埋入手術を行うため、最終的な歯が入るまでの期間は、約3ヵ月短縮される場合もあります。

STEP.1

STEP.2

メリット
手術を行う歯科医師の治療技術の差によって成功率は大きく異なるが、文献や論文も数多くある世界的に認知された予知性も高い術式です。
デメリット 術者の技術により成功率は大きく左右され、術中・術後に起こる可能性がある問題としては、術後の疼痛や腫れ、内出血などの比較的軽いものから、上顎洞粘膜の損傷による出血やインプラントの迷入、感染による移植骨の除去および再治療、副鼻腔炎や上顎洞炎など重篤な問題を引き起こすリスクもある難易度の高い術式です。

サイナスリフト治療例

Step.01

Step.02

Step.03

Finish

ソケットリフト

インプラント体を埋入するときに上顎の奥の骨が薄い場合、上顎の骨を少しだけ残してその骨ごと上顎洞を覆っている粘膜(シュナイダー膜)を持ち上げ、そこに骨を増やしてインプラントを同時に埋め込む方法です。

STEP.1

STEP.2

STEP.3

当院では、ポイントとして水圧による上顎洞粘膜の拳上も行っております。

仮骨延長法(ディストラクション)

仮骨延長法は、骨に切れ目を入れてゆっくりと伸ばしていくことで、骨を延長するユニークな方法であり、1960年代に旧ソ連の整形外科医 Ilizarov により確立されました。

方法としては、最初に伸ばしたい骨を適切に切断し、装置を装着し一定期間待機した後、装置を用いて切断面を骨の伸ばしたい方向にゆっくりと一定の速度で離開すると、骨が延長するのである。この時、伸びる骨は仮骨という若い骨であり、必要な長さまで骨を延長した後は、その位置で固定して仮骨が成熟するのを待ち、骨が成熟したら、装置を除去する。

この方法は、骨移植が必要ないことや、手術侵襲が比較的少ないこと、骨周囲の口腔粘膜や皮膚などの軟組織を同時に延長できることが利点であるが、骨をゆっくり伸ばすことから延焼している間、ずっと装置を付けたままにしないといかないことなどが欠点である。

現在、顎の高さだけでなく、顎の幅を増大できる装置があるが、特殊な装置を必要とすること、ネジを定期的に回転させる必要があること、仮骨延長期間は補綴物を装着できないことが問題となるため、骨折や腫瘍の切除後等、特別な場合に用いられることが多い。

メリット
骨採取や代用骨を必要としない術式で、骨の移動と同時に周囲の軟組織(歯肉)も持ち上がるため比較的審美性の高い治療結果が得られます。
デメリット 特殊な装置を口の中に入れたまま約4カ月使用し続ける必要があり、来院回数も多くなる。装置装着部に感染が起こるリスクがあり、装置を外してからも移動した骨が安定するまでに約6ヵ月の期間が必要です。

ディストラクション治療例

再建骨に仮骨延長を行った症例。下顎の切除後、腸骨で再建した顎の厚みを高くするために仮骨延長法を応用し、その後にインプラント治療を行った。

初診時

仮骨延長後

最終補綴装着後

最終補綴装着後(口腔内)

再生医療・成長因子

近年、成長因子の投与により骨を注射で増大させようとして研究が進んであり、一部では臨床応用されている。代表的なものには、BMP、FGF、TGF-β、IGF-1、PDGF などがある。

1960年代にUCLAのUristが、脱灰した骨より取り出した蛋白を皮下や筋肉内に埋入すると、骨組織が誘導される現象を発見し、ある種の活性物質が、未分化間葉細胞を骨芽細胞に分化させたと考え、このような作用を示す活性物質をbone morphogenetic protein(BMP)と名づけた。1988年にBMPのcDNAクローニング、リコンビナントタンパクの作製と骨誘導活性が報告され、BMP2 と BMP7 を用いた臨床応用に関する研究がおこなわれています。

FGF、TGF-β、IGF-1、PDGFなどの成長因子は骨以外の皮下や筋肉の中では骨誘導能を示さないが、骨に接している部分で用いることで骨の増加作用を示す。特にFGF2は、骨折部に適用すると骨折の治癒を促進することがわかっており、一部で臨床応用されている。

その他、PDGFは細胞増殖作用、TGF-βは基質増加作用、VEGFは血管新生作用を示すこれらの成長因子を放出を期待して、患者の血液から血小板を濃縮しゲル化させたものPRPを用いることにより、治癒促進を期待する再生医療が臨床応用されている。

骨欠損部にPRPと、骨代替材料あるいは自家骨と混入させて使用することで臨床応用される。

移植材(自家骨および人工代用骨について)
自家骨

腸骨

腸骨(ちょうこつ)は、四肢動物の腰帯を構成する骨の一つです。手術は全身麻酔下で口腔内のインプラント埋入術と同時に行い、術後は、移動の際には車椅子や歩行器を用い患部に負担が加わらないようにします。また皮膚切開も1cm以下で、術後の傷跡も目立たないような配慮がなされます。

膝骨

膝蓋骨(しつがいこつ)は、三角形の骨で、大腿骨に繋がっており、膝の前面を保護しています。人体の中では最も大きな種子骨であります。その形状から、膝の皿とも呼ばれます。

下顎枝

下顎枝は下顎骨の一部で、下顎体の後端から上後方に伸びている部分です。上方は筋突起と関節突起に分かれます。自家骨移植術は同部位を使用します。下顎枝を専用の器具を用い、採骨し、粉砕した形状でインプラントを埋入する箇所に填塞します。手術は基本的に全身麻酔下で口腔内のインプラント埋入術と同時に行います。

上顎結節

上顎結節とは、上顎堤の遠心端(上顎最後臼歯の更に奥)のやや膨らんでいる部分を言います。
インプラント埋入手術と同時に上顎の親知らずを抜歯した際に同部位から採骨する場合もあります。

人工代用骨

HA(ハイドロキシアパタイト)

HA(ヒイドロキシアパタイト)とは、リン酸カルシウムでできた歯や骨を構成する成分のことで天然歯のエナメル質部分は約97%がHAで構成されています。骨の誘導因子も有していることから口腔外科・顎顔面整形外科領域で広く使用されている材料です。

β-TCP(β-リン酸三カルシウム)

カルシウムのリン酸塩の粉末を加圧し、1000~1300度で焼成されたものを主成分としたもので、骨組織と一体化する生物学的な特徴を持っています。
インプラント症例以外にも、骨腫瘍摘出や骨折等の外傷によって生じる骨欠損部への補填として使われています。これまでの人工骨は、移植後も長期に渡り体内に異物として残留するのに対して、当科で採用している骨補填材は移植後に自分の骨として吸収され置き換わるリモデリングといわれる性質を有しております。症例にもよりますが、自家骨移植を最小限にすることができます。

異種骨

骨伝導に優れた天然のウシ由来多孔性骨補填剤です。歯槽骨、顎骨の欠損部位における骨の再生・増大において、成長を促進し、インプラント植立に必要な骨量を確保できます。

有効性と安全性については、100以上の大学での研究成果、15年以上にわたる研究や臨床実験、そして150万人以上の治療実績などによって十分に証明されています。

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