骨不足でインプラント治療ができないと断られた方へ

Dr.新谷 悟のメッセージ

言い尽くされたことかもしれませんが、インプラント治療による、歯の回復は、患者さんにとって、噛む・話す・飲むといった機能回復と前歯の美しさなどの審美性に大きく役立つ素晴らしい技術です。

しかし、歯周病などの歯牙を失った原因によっては、歯槽骨という歯を支える骨の吸収によって「骨不足」という問題でそのインプラント治療ができない患者さんもおられます。

「骨不足=骨が足りないからインプラントができない」
と歯医者さんで言われた患者さんがいらっしゃるとします。

と、その理由は、

  • その先生が骨造成などの骨を増やす技術を持っていない
  • 正確にインプラントの位置、方向、深さなどをコントロールして埋入する技術を持っていない。
  • トラブルになった時に適切に対応できない(できる自信がない)などではないでしょうか。

骨が足りない症例、極論を言いますとどんな症例でもインプラント治療は行えます。

骨の不足が、小さな範囲や少ない量であれば、人工骨(最終的に自分の骨に置き換わります)やGBRという膜を使って骨ができるスペースを作ってやることで骨ができますし、大きな症例では、顎の他の部分から骨を採取して、骨の足りないところに骨移植できますし、さらに骨が足りない場合には、腰の骨や足の骨などを採取して、骨を増やすことも可能です。

インプラント治療に必要な歯槽骨のみならず、顎の骨自体も作ることが可能です。顎の悪性腫瘍(がん)などで顎骨を切り取った後に、腰骨や足の骨などで顎の骨を再建(作ること)することも、口腔がんの治療としては比較的、普通に行われているのですから。

一方で、問題と言いますか、相談しないといけない部分が、人工骨を使って骨の量を増やすということであれば、インプラントを埋入する手術部位だけの手術ですので、患者さんの侵襲(ダメージ)も少なく、多くの方が手術をうけようと思われると考えますが、インプラントのために、顎の他の部分の骨を取るために歯肉を切開して骨を取ってくることに対しては、それぞれの患者さんの考え、思いによると思いますが、抵抗感を覚える方もあられると思いますし、ましてや腰骨や足の骨を皮膚を切開して、採取するとなるとかなりの方が、「そこまでして・・・・・」と思われるかもしれません。

骨造成は、どんなドクターでもできるものではなく、また、その骨を増やす範囲や量が増えるほど、うまくいかない場合のトラブル回避、トラブル処理が非常に重要になってきます。信じられないことかもしれませんが、ドクター向けの講習会に行って、動物の顎などで練習して(あるいは練習もせず、講習会に出て骨造成のスライドを見ただけで)患者さんに骨造成を行うドクターも非常に多く存在します。

骨造成は、外科手術です。外科手術を習得するには、優れた外科医の前立ち(術者の前に立つ第一助手)を行って、何回も何回もその外科手術を見て、その後、手術の一部を指導外科医の前で担当し、少しずつ習得して1人前になります。決して動物で(それも生きていない)練習したから、患者さんに行ってよいというものではないと思います。

骨を増やす範囲や量が増えてくると、それだけトラブルが生じるリスクが増えます。その対応を自分でできないドクターは、その骨造成手術を行うべきではないというのが私の考えです。見よう見まねで骨造成を行ってトラブルになれば大学病院や他のドクターにお願いする。そんなドクターに手術された患者さんは不幸としか言えないと思います。

骨が足りなくてインプラント手術ができないといわれた患者さんは、どのような手術をすればインプラントができるのかをまず知り、その手術を自分が受け入れられるのかを十分に説明してもらい、うまくいかなかった場合のリスクやその対応ができるドクターかどうかを自分の目で見極めてその手術を受けるかどうかを決めた頂きたいと思います。

どういった場合に骨造成が必要となるのか

まず「どういった場合に骨造成が必要になるのか」ということを考えると、歯を支える歯槽骨が吸収してインプラントの骨に入れる部分に十分な骨の厚み、高さ、量が足りない場合ということになります。

歯を失う原因というのは、外傷などの特別な場合を除き、歯周病(歯と歯肉の間から骨が溶けてきてぐらぐらし始めて抜ける)による場合と、虫歯などから根の先に病巣ができてあるいは、神経を取った歯の根が割れてなどによる根尖病巣から歯が持たなくなって抜くということになります。いずれの場合も、歯の周りの骨を溶かしてしまいますし、歯槽骨の周りにある歯根膜もその炎症が起きた部分ではなくなってしましますので、一度失った骨は自然には再生しません。

骨造成が必要な場合には
①インプラントを埋入する骨が十分ではない場合
②インプラントを理想的な位置に埋入するために骨があったほうが良い
という絶対的な適応と相対的な適応があります。②は前歯部などで特に見た目を美しくするために必要になります。

骨造成を必要としない症例

歯槽骨の吸収がなく、骨造成を必要としない症例

乳歯の晩期残存(大人の歯がないことによって乳歯が生え変わらずにそのまま残っている状態)で乳歯が動揺するのでインプラントを行う症例。
このような症例では、歯槽骨は全く吸収していないために骨造成はありません。

根尖性歯周病での骨吸収

根尖病巣や歯の根の破折で骨吸収が生じた症例

歯の神経を取って土台を立て、歯のかぶせ物をした症例では、しばしば、根尖病巣(歯の根の先の骨が溶ける)や歯の根が割れて、そこに感染して歯槽骨が吸収することが多く認められます。そのような症例では、下顎の神経までの距離が十分ではなく、抜歯とともに骨造成をしたほうが良い症例もあります。

根尖病巣で骨吸収が生じた症例

歯の神経を取って土台を立て、歯のかぶせ物をした症例では、先ほどもの症例のようにしばしば、歯の根の先の骨が溶けます。下顎の神経までの距離が十分ある症例でも、赤で示した範囲の骨、特に頬側の骨が溶けていることは、理想的な位置にインプラントを埋入する場合に、問題になってきます。このような症例では、抜歯とともに骨造成をしたほうが良い症例もあります。

歯周病で骨吸収が生じた症例

症例01

国民の大部分が罹っているとも言われる歯周病ですが、重度になって歯が抜け落ちる場合に土台である歯槽骨も吸収します。

点線は従来、歯槽骨があった高さを示し、実線は現在の歯槽骨の高さを示します。このような症例では、下顎の神経との関係などで、骨造成を必要とする場合もあります。(短いインプラントを用いて、骨造成を回避することもあります。)

症例02

上顎の症例ですが、点線は従来、歯槽骨があった高さを示し、実線は現在の歯槽骨の高さを示します。このような症例では、上顎洞(上顎にある空気が入っている部屋)までの距離がなく骨造成を必要とする場合があります。(短いインプラントを用いて、骨造成を回避することもあります。)

骨造成とは

骨造成とは、文字通り、骨を幅や厚みなど、骨の量を増すように造ることです。自家骨といって自分の骨を使って、他の部位から骨を移植する場合と、人工骨といって、工場で作られ、それを入れることで骨に徐々に置き換わってくるのを待つ場合があります。

自家骨(自分の骨)を移植した場合でも、骨はリモデリングといって、毎日、少しずつですが、古い骨が吸収し新しい骨ができるというのを繰り返しますので、どんどんと新しい骨に置き換わっていきます。人工骨の場合にも、同じことで人工骨が少しずつ吸収し、新しくできる骨に置き換わるということを繰り返し、新しい骨になっていくのです。

そして、この骨のリモデリングを利用してインプラントに適した状態に骨の形(幅や厚み)を整えていくのが、骨造成ということになります。

垂直的骨造成

インプラントを入れる高さが十分ではない症例では、高さを確保するために垂直的な骨造成を行ったほうが良い場合があります。しかし、垂直的な骨造成をするためには、①それだけ多くの骨をどこから持ってくるのか(腰の骨、足の骨など)、②その大きな骨をどうやって歯肉で覆うのか(歯肉は伸びません)という問題が生じることも事実です。

広い範囲で垂直的な骨造成が必要な場合

黄色の線で示しているのは、元の歯槽骨のラインで、オレンジ色のラインが現在の骨レベルを示している。赤は下顎管(神経の管が走行している部分)である。

垂直的骨造成を行うということは、オレンジ色のラインの骨の上に骨を盛って増やすことになる。

この時に問題となるのが
①それだけ多くの骨をどこから持ってくるのか(腰の骨や足の骨など)
②その大きな骨をどうやって歯肉で覆うのか(歯肉は伸びません)
という点である。

骨移植を伴う方法

一つは、すでに述べましたが、腰の骨や足の骨。または下顎の骨を採取して、骨が足りない部分に補填する方法です。これには、ある程度の大きな手術となることが必要であり、術後の腫れや痛みもある程度は覚悟しないといけないことになります。

口腔内からの骨採取ならびに腰骨や足の骨からの骨採取については、以下の図に示しますが、大きな骨造成ではこのような部位から骨を採取することを余儀なくされることを知っておく必要があります。これらの手術の中で腰骨や足の骨からの採取では、全身麻酔下に行われることが多いですが、簡単に骨造成すると言っている担当医が本当に手術経験が豊富で信用できる先生かどうかを見極める必要があると思います。

仮骨延長法という選択

仮骨延長術は、G.A. Ilizarov によってイリザロフ法が開発されてから整形外科の分野で脚延長術などの分野で発展してきました。この方法は、骨に人工的に骨折を起こさせて、それを一定の感覚で広げることで未熟な骨(仮骨)ができることで骨の長さなどを延長する方法です。

この仮骨延長法 の下顎骨への臨床 応用は,1992年McCarthyらにより初めて報告され、顎骨発育不全の症例に対し、従来行われてきた骨切り術、骨移植術などの外科的治療に変わる方法として、口腔外科領域でも用いられるようになってきました。(McCarthy JG, Schreiber J, et al : Lengthening the human mandible by gradual distraction. Plast Reconstr Surg 89: 1-8, 1992.)

これらの顎骨への仮骨延長術を歯槽骨に応用して、インプラントを埋入する十分な骨がない場合に骨造成を図ろうとする方法が歯槽骨における仮骨延長術である。この方法は、骨移植やGBRという技術を応用せずに、ディストラクターという器具を使い、自分の骨からできる仮骨の成長を促して、骨を増大させることができる術式です。

すなはち、骨が不足している部分で、舌側の骨膜粘膜を剥離せず、顎骨にコの字型の切り込みを入れ、骨片を骨折させ可動な状態にします。そして、ディストラクターを顎骨と遊離骨片の両方にとりつけ、1週間ほど、軟組織の治癒を待った後、骨片を少しずつ顎骨から離し、その、1日あたり0,5〜1ミリずつ広がる部分に新生骨である仮骨を作り、骨を増やしていく方法です。ディストラクターはネジ式で、少し回転させますと、それに伴い歯肉も増え理という特徴があります。新生骨である仮骨ははじめは軟らかいために、固くなるまで数ヶ月待機する必要があります。

その後、インプラント手術に移行し、術前は骨がなかったところにインプラントを植立が可能になります。骨移植などをしないという点では素晴らしい方法なのですが、問題点として、骨造成の方向のコントロールが難しいということ、歯槽頂部に骨吸収が見られることが多いこと、軟組織の形態が審美的にすることが難しいなどが挙げられます。その中でも最大の欠点は、ディストラクターという仮骨延長に必要な器具を仮骨延長を行っている期間ならびに仮骨が十分なかたさを持つ骨になるまでの期間である数か月、口に中にあるため、邪魔になったり、見た目の審美的な問題も生じることです。

このような問題点も多いために、臨床で行われることは少なくなってきましたが、骨造成の有効な術式の一選択肢である方法です。

骨を作る治療
骨の高さが足りない方

インプラントを埋入ための、垂直的な高さが足りない場合に、その高さを確保するために骨を垂直的に増やす方法が垂直的骨造成といわれる方法です。

垂直骨造成の代表的な方法としては、①自家骨(自分の他の部位から骨を採取した骨)による、あるいは人工骨を用いたGBR(骨の高さを増した部分に膜などでスペースを作って高さを増す方法)もしくは、②仮骨延長術になります。
症例を供覧します。

症例.01

症例は右側臼歯部で垂直的な骨の高さが足りないと判断して、垂直的な骨造成を行った症例です。

下顎枝という部位から自家骨(自分の骨)を採取して、粉砕して細かな骨にして、骨の高さの足りない部分に盛るように置いています。それだけでは、結合線維や上皮といった瘢痕組織になるような組織が入り込むため、それを防ぐためにメンブレン(膜)を置いて、瘢痕組織が骨ができるまで、骨の組織に入り込まないようにしています。

最近では、自分の体のどこかから骨を採取する自家骨(自分の骨)で骨造成しなくても、工場で作られた人工骨を用いた垂直的な骨造成が科学的根拠をもって行われるようになってきています。

仮骨延長法は、垂直的な骨の高さを増やすという点では優れているかもしれませんが、その期間が長いこと、口の中にデバイスが持続的に入っていること、仮骨延長を行うために毎日、ディバイスを操作しないといけないことなどから、その適応は少なくなってきていると思われます。

症例.02

次に供覧する症例は、左側の臼歯部の仮骨延長術と下顎前歯部の歯槽骨を外傷によって欠損した患者さんの仮骨延長術の所見です。

同様の患者さんが当クリニックに来院されたときにこの方法を用いるかについては疑問です。近年は、6mm や 8mm の短いショートインプラントが、科学的な根拠をもって使用できるようになってきており、このような短いインプラントを3Dテクノロジー(サージカルガイドを用いて骨の正確な位置に埋入する技術)を用いて骨のある所で、かつ、最終的な補綴(歯の部分)に適切な、位置、長さ、角度を埋入する方向に変わってきていると思われます。

幅や厚みが足りない方

インプラントを埋入ための、水平的な幅さが足りない場合に、その幅を確保するために骨の幅(厚み)を増やす方法が幅や厚みを増やす骨造成といわれる方法です。

幅や厚みを増やす骨造成の代表的な方法としては、①自家骨(自分の他の部位から骨を採取した骨)によるべニアグラフト:これは顎など他の部位から板状の骨を採取して、幅や厚みを増したいところにネジで止めて、その移植した骨と従来の骨がリモデリングして、癒合して幅や厚みを増す方法②エキスパンジョンやスプリットクレストという方法で骨に切り目を入れ、特殊な器具を用いて、骨を広げる方法があります。
症例を供覧します。

症例.01

症例は、べニア(板状の骨)を骨の幅の足りないところにネジで固定し、その周りに採取した骨を粉砕して移植している水平的な骨造成の手術所見です。4-6か月で板状の骨は従来のご自分の薄い骨に生着します。

症例.02

別の症例です。前歯部に2本のインプラントの埋入予定で、骨の幅が少なかった症例です。

インプラントの埋入後、下顎枝部から採取した板状の骨を用いてインプラント体を被覆し、インプラント体と骨が生着するのと同時に板状のべニアの骨が自身の骨とも生着させる方法を取った。

過去には、このような骨造成法も行っていましたが、患者さんへの負担が多いため、現在では、人工骨を用いることが多くなっています。

骨幅を増やすスプリットクレスト

骨の幅を増やすためのスプリットクレストという方法です。

薄い骨の皮質骨に切り目を入れてそこに広げるためのネジを埋入れて行き、幅を広げます。完全に粘膜を剥離して、歯槽骨を骨折される感じで広げていく方法です。

自家骨を他のところからとってくるという侵襲(患者さんの負担)は軽減されますが、骨を割って広げていくためにインプラント埋入の位置が不安定になることもあります。

シンタニ歯科口腔外科が行う骨造成術の特徴

具体的な骨の高さ、幅を作る治療について記載する前に、なぜ、骨を作らないといけないのかについて説明したいと思います。

私がインプラント治療を始めた20数年前、インプラントはできるだけ長く(18mm、16mmや14mmなど)場所によって異なりますが、できるだけ太いインプラントを埋入する方が良いとされてきました。しかし、科学的根拠を持った研究、解析がなされ、今では下顎で10mm、上顎では12mmのインプラントが理想とされます。さらに、もっと短い8mm, 6mmなどのショートインプラント(短いインプラント)でも、十分に機能する科学的エビデンスが示されるようになってきています。

骨を多く作ることは可能ですが、それだけ、体に対する侵襲(負担)が増えることも事実です。家族に行う治療を患者さんに行うというコンセプトで治療を行っている当クリニックの骨造成では、上顎で12mm、下顎で10mmの理想的なインプラントを埋入する最小限の骨造成を行うという方針で行っています。さらに、患者さんのかみ合わせの力やその他の対合歯(噛みあう歯)の状況などによっては上顎では10mm、下顎では8mmのインプラントを用いて、骨造成を回避するように心がけております。

自分が治した歯、治療したインプラントが患者さんの一生に寄り添って機能することを目指し、それに十分な根拠をもってインプラントの長さ、幅を選択し、必要ならば骨造成を行う。これが東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニックのインプラント治療・骨造成に対する姿勢です。

スプリットクレスト

スプリットクレストという歯槽骨に切り目を入れて広げていく方法から、インプラント一本一本での骨の小さな穴を骨のたわみを利用して少しずつ広げていく方法(より患者さんへの負担が少ない)へと、より良い治療を求める。

人工骨を用いた骨造成

患者さんの他の部位から骨を採取して、骨の量を増やす方法から、できるだけ人工骨を使って骨を造成する方法へ、より良い治療を求めて行っています。

痛みを抑えた骨造成術

骨造成は手術になりますので、通常のインプラント埋入の手術よりは術中・術後に痛みを伴うことは事実です。手術時間も長くなります。

その中で、自家骨(患者さん自身の他の部位から骨を持ってくる)を選択せず、優れた人工骨を用いることで患者さんの負担、術中・術後の痛みが軽減され、手術時間が短くなることは事実ですし、大きく骨膜粘膜弁(粘膜とその下の骨の表面にある骨膜を切開して大きく広げる方法)を作成するよりも、最小限の切開やサーキュレーションメスを用いインプラントが歯肉から頭を出す部分だけをくりぬくように丸く切開する方法の方が痛みも軽減されます。

また、簡単な骨造成では患者さんにリラックスしていただくために笑気ガスを酸素とともに吸っていただき、脈拍、酸素飽和濃度をモニターすることで術中のいたものコントロールに心がけます。さらに、少し時間がかかる骨造成手術では静脈鎮静法として歯科麻酔専門医の先生に来ていただき、点滴でほとんど眠ったような状態で手術を受けられるように心がけます。

上顎の骨造成

上顎には、上顎洞(副鼻腔)という空洞が目の下、鼻の横にあります。この空洞までの距離がない方が「インプラントができない」と言われ、当クリニックに来られます。

サイナスリフト、あるいはソケットリフトという方法がとられます。

上顎洞までの距離などで決定されますが、その基準も1990年代と2010年代では変わってきています。ソケットリフトというのは粘膜と骨膜を切開して上顎洞の外側から、骨を入れていく方法であり、ソケットリフトはインプラントを埋入する穴からところてんの要領で上顎洞の中に人工骨を入れていく方法です。詳しくは以下の症例の術中写真を見ていただければ幸いです。

症例01.ソケットリフト法

左側は3本インプラント埋入(ソケットリフト併用)、右側はサイナスリフトを併用、同時埋入を行った患者さんです。

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サージカルガイドの装着している所見です。

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サーキュレーションメスをガイドに沿って挿入し、歯肉を丸く切開します。

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サーキュレーションメスによって歯肉に丸く切開が行われています。

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サーキュレーションメスで丸く切開した歯肉を切除した後の口腔内所見です。

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歯肉の切除を行った後、上顎洞の洞底直前まで、骨のドリリングを行います。

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上顎洞の粘膜を損傷しないソケットリフト用のドリルで上顎洞底の骨を穿孔させています。上顎洞の粘膜は傷つかないような構造になっています。

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穿孔させた穴から生理食塩水を注入し洞粘膜を挙上しています。膜を破らないようにするためのテクニックが必要です。

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洞粘膜が破れずに挙上された場合には、陰圧をかけることで血液の逆流が認められます。この時、大量の空気が返ってくるようであれば、それは、洞粘膜が破れた可能性が高いことになります。

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上顎洞の粘膜を傷つけないようにスポンジ状の人工骨をはじめに挿入して洞粘膜の挙上を行っています。

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インプラント形成窩(インプラントを入れるための穴)に人工骨を挿入し、ソケットリフト用の特殊な器具で上顎洞内にところてんのように押し込みます。

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インプラント形成窩に顆粒状の人工骨2種類(骨に置換する期間の少し長いものと短いもの)を混合して挿入しています。

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下から専用の器具で人工骨を上顎洞内へ送り込んでいます。

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隣の別の部位にインプラントを埋入するためのドリリングを行います。

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上顎洞内に骨が押し込まれ、上顎洞粘膜が挙上された後にインプラントをサージカルガイドを用いて埋入します。

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計画通りの位置、角度、深さに埋入します。

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上顎洞を穿孔していますが、その上には先ほど押し込んだ人工骨があり上顎洞の粘膜も守ってくれています。

症例02.ラテラルウィンドウテクニック法

上記の症例に対し、右側では上顎洞の前壁から骨に窓開けを行って(ラテラルウィンドウテクニック)、その窓の部分から人工骨を上顎洞内に補填し、そこにインプラントを埋入するサイナスリフトを行った。

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窓開け部分の歯肉の切開を行います。

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粘膜を切開して粘膜骨膜弁を剥離。

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歯肉・粘膜を剥離し術視野確保。

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上顎洞の前壁を明示しています。

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少し、薄暗く見えている部分が上顎洞の前壁になります。

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上顎洞の前壁をピエゾサージェリーという軟組織(皮膚や口の中の粘膜)は器具が触れても傷つけず、骨のような硬いものだけを削る特殊な機械を用いて、切削しています。

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骨が丸く切削されその周囲に上顎洞の粘膜が確認できます。この粘膜を破らないように施術することが大切です。

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上顎洞の粘膜を損傷しないように骨と粘膜を一緒にサイナスリフト用の特殊な器具を使って挙上しているところです。

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上顎洞の粘膜を損傷しないように骨と粘膜を一緒にサイナスリフト用の特殊な器具を使って挙上しているところです。

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上顎洞の中にまず、スポンジ状の人工骨を入れ、下からインプラントを埋入する穴をドリルで削るときに軟膜を傷つけないように洞粘膜を挙上します。

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サージカルガイドを用いて、位置、角度を規制してドリリングを行います。

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上顎洞粘膜は挙上されており、スポンジ状の人工骨で挙上されているために傷つけられることはありません。

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インプラントを埋入する前段階として顆粒状の人工骨を上顎洞内に充填します。

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この場合にも、自分の骨への置換までの期間が比較的早いものと遅いものを組み合わせ混合して充填しています。

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人工骨で充満した上顎洞へサージカルガイドを用いて、位置、角度、深さを規定してインプラントを埋入していきます。

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埋入が終われば、上顎洞の前壁の窓開けの下部分を吸収性の人工膜で覆い、縫合して手術が終わります。

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インプラント手術後のレントゲン写真。

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上顎洞が人工骨で挙上されその中にインプラントが埋入されているのがわかります。

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6か月後には上部構造(歯の部分)も装着され、患者さんは非常に喜ばれました。

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