インプラント治療とアレルギー

東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニックでは

インプラントアレルギー検査に関して、当院では実際に埋入するインプラント体の成分を検体として、パッチテストを希望者に行っております。

ご安心してスタッフまでお伝えください。

インプラント治療とアレルギー

インプラント治療は、インプラント体(チタン合金を主な成分とする人工歯根)を、顎骨に埋入する治療です。チタンは、アレルギーをおこしにくい金属として知られ、医療分野においてもペースメーカー(人工心臓)、人工関節など体内にチタンが使用されています。しかし、全くアレルギーを起こさない物質ではありません。

では、チタン製のインプラントを埋入する際に、チタンアレルギーがある方は、インプラント治療を受けることができないのでしょうか。実際には、そんなに単純な話ではないのです。

お伝えしたいこと
  • チタンは、空気に触れる表面が強力な酸化物(不動態酸化皮膜)で覆われる不動態となり、非常に安定な化合物で、耐食性や安定性が優れている。
  • 実際に、インプラント治療をお受けになった方にチタンアレルギーのパッチテストをしたところ、0.6-1.7%の頻度でアレルギー反応があった患者さんでも、臨床症状を伴わない場合がほとんどであること。
  • インプラント治療後のアレルギー反応の臨床症状の報告もありますが、原因は、インプラント体そのものではなく、インプラント治療に付随するチタン製品の切削片やインプラント周囲炎の影響が示唆されていること。
  • 拒絶反応や金属アレルギーを防ぐため、インプラント体は、グロー放電でクリーニングしたり、純チタンにできるだけ近づけるようにする、逆にインプラント合金によってアレルギーを抑えるなど様々な工夫がなされていること。
  • 北川雅恵ら、インプラント術前検査としてのチタンアレルギー検査の意義:日本口腔検査学会雑誌 第 7 巻 第 1 号31:2015
  • 和泉雄一、荒川真一 インプラント治療をめぐる問題点(インプラント周囲バイオフィルム構成細菌とチタンアレルギー) 日本歯科医師会雑誌63(9)87-88 2010
  • 岩坪昤子、滝野雅文 インプラントでのチタンアレルギーを経験して 日本歯科評論 69(10) 113-120、2009
  • 井上孝、松坂賢一 金属アレルギー、特にチタンアレルギーについて (特集 インプラント治療の適応を見直そう(2)リスクを抱える患者への応用) 日本歯科評論 68(12)87-92、2008
  • 細川隆司、赤川安司 チタンインプラントに対する金属アレルギーのリスク 広島大学歯学雑誌34(1)1-5、2002

これらのことから考えるとチタンに限らず金属アレルギーをお持ちの方やその疑いがある方は、その旨を担当医に伝え、実際に入れるインプラントで使用されているチタン合金に対するアレルギーの有無をパッチテストなどの検査を行って確認し、そのうえで、リスクも知って治療を受けることが大切であると思います。

チタンとは

1791年に発見された金属で化学的・物理的にジルコニウムに近いことがしられています。チタンは、空気に触れる表面が強力な酸化物(不動態酸化皮膜)で覆われる不動態となり、非常に安定な化合物で、耐食性や安定性が優れています。

1952年に生体親和性が非常に高く骨と結合する(オッセオインテグレーション)ことが発見されると、インプラント体にチタンを使用するようになりました。拒絶反応や金属アレルギーを防ぐため、グロー放電でクリーニングをしたり、純度の高いチタンが使用されています。また、人工関節/人工骨といった整形外科分野でも利用されています。

合金の組成例 Ti-3Al-2.5V Ti-6Al-4V Ti-6Al-7Nb

では、チタンに関してのアレルギーの報告に関してはどのようなものがあるのでしょうか。チタンは、腋臭止め(デオドラント)や顔料(ファンデーション)などの日用品にも使用されるようになっており、接する機会が多くなった結果、チタンアレルギーを発症する人は増えているようです。(鹿庭正昭、家庭用品に使用される化学物質による健康被害と安全対策 Bull. Natl. Inst. Health Sci., 124, 1-20 (2006) Special report)

医療分野も例外ではなく、1980年代からペースメーカー、人工関節、インプラントによるチタンアレルギーの報告がされています。金属アレルギーは、原因となる金属イオンと体内の免疫細胞とが過剰に反応して起こります。

この点から、先ほど記述しましたように、インプラントの組成である純チタンあるいはそれに近いチタン合金は空気に触れると表面に酸化チタンの皮膜を形成し、非常に安定し、金属イオンを溶出しづらくなるため、歯の詰め物や被せものに使われる歯科金属に比べて、アレルギー反応が起こりづらいと考えられています。

チタンアレルギーの頻度

本邦ならびに海外で、歯学系医療機関でチタンアレルギーの発生頻度に関して研究調査・報告がなされています。

調査医療機関 対象 人数 頻度 方法
広島大学病院 金属アレルギーの疑いで来院した患者 408人 7人(1.7%) パッチテスト
愛知学院大学   1,000人 5人(0.5%) パッチテスト
カロリンスカ研究所スウェーデン 金属アレルギーが疑われた患者 2,042人 184人(5.8%) イライザ法
オビエド大学スペイン インプラント治療の受診者 1,500人 9人(0.6%) パッチテスト
  • 北川雅恵ら 広島大学病院歯科における歯科用金属アレルギー被疑患者を対象としたパッチテストおよび元素分析の動向(第1報)過去10年間の業績 広島大学歯学雑誌 40(2)124-128、2008
  • Sicilia Alberto, Cuesta Susana, Coma Gerardo, Arregui Ignacio, Guisasola Cristina, Ruiz Eduardo, Maestro Antonio Titanium allergy in dental implant patients: a clinical study on 1500 consecutive patients Clinical Oral Implants Research19(8)823–835、2008
インプラント治療におけるアレルギー発生のリスク

先述したように、インプラント体は純チタンに近づけることや、逆にチタン合金などでアレルギー反応を防ごうとするなどの工夫を行っています。

100%のチタンであれば、チタンアレルギーのない方には問題ないのではないかと思われる方も多いかもしれませんが、全てのチタン材料はいくら100%に近づけようとしても、非常に微量であるもののチタン以外のニッケル、クロム、パラジウムなどの金属を不純物として含んでおり、その微量な不純物とも言える金属が、アレルギーを引きおこす原因になっているのです。

  • Thomas Harloff, Ulrich Holzwarth, Rainer Bader, Peter Thomas, Alexander Schuh Titanium allergy or not? “Impurity” of titanium implant materials Health2(4)30:306-310,2010

さらに、このような不純物(チタン以外の物質という意味)は、

※手術時に使用するドリル(切削器具)の金属片から骨内に微量入る可能性
※手術時にインプラント表面のチタン粒子ならびに合金が剥がれイオン化する
※インプラント周囲炎によって、インプラント表面のチタンならびに合金成分がイオン化する

によってアレルギー反応を生じる原因として考えられます。

インプラント治療におけるチタンアレルギー症状

アレルギーの症状としては、他の金属アレルギーと同様に、全身や顔面の湿疹、口唇炎、口内炎、口腔扁平苔癬などですが、インプラントに対する拒絶反応を伴ってインプラント周囲炎が発生することも報告もされています。

  • 小野擴仁、早野圭 金属アレルギーにおけるインプラント除去の1症例 歯科学報1004(5)491-496.2004.
  • 井上孝、松坂賢一 金属アレルギー、特にチタンアレルギーについて (特集 インプラント治療の適応を見直そう(2)リスクを抱える患者への応用) 日本歯科評論 68(12)87-92、2008
  • 細川隆司、赤川安司 チタンインプラントに対する金属アレルギーのリスク 広島大学歯学雑誌34(1),1-5,2002.
アレルギー検査の実際と種類

①血液検査(特異IgE抗体の同定)

②皮膚テスト(プリックテスト)

③接触皮膚炎テスト(パッチテスト)

などがありますが、インプラント治療に対する検査としては一般的に③接触皮膚炎テスト(パッチテスト)が行われます。

血液検査

IgE抗体を介したアレルギーに対して、このIgEの量を調べることでアレルギーの有無や程度を知る検査で、ダニやスギなど、ある特異的なアレルゲンに対してや非特異的な藩王を監査します。血液検査で、多くの食物や、抗原に対する検査ができる反面、一部を除いて、信頼性があまり高くないという面もあります。金属アレルギーの検査としては適切とは言えません。

プリックテスト

即時型アレルギーに対する検査として、その安全性や有用性、簡便さから本邦や欧米で推奨されている検査法です。方法はプリック針でアレルゲンを少量皮膚に入れ、15分後に出現した膨疹径を測定します。

パッチテスト

アレルギー性接触性皮膚炎や薬剤アレルギーなどのIV型アレルギーと言われる遅延型アレルギーの原因を探る検査で、原因として疑わしい物質から作成した試料を直接皮膚に貼り、2日後、3日後、7日後に判定します。

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